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たぶんゲームオーバー

気付かないふりーくす

きのこ帝国『愛のゆくえ』について

 

愛のゆくえ(初回限定盤)(DVD付)

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 きのこ帝国の『愛のゆくえ』は自分にとって夜のアルバムであるらしくて、それはこういう音楽性だからとか初めて聴いたのが夜だったからとか改めて朝聴いて初めて気付いたからとか、そういう事もあるかもしれないけど、それよりも、眩しい曲もありながら全体的には深淵な印象である事、聴いてるとまるで1対1の親密なやりとりを行っているような感覚に陥る事、ラストが夜明けのイメージを連想させる事、しかしながらその先を描こうとせず最後の曲が終わった瞬間にこの物語は終わりを迎える事、すなわちその先の新しい朝そして新しい夜は私達自身で見届けなくてはならない事、アルバムのテーマが愛であると同時に喪失である事、そしてこれは失うことに敏感で、何かを失うことでしか生の実感を得られない様な人達を肯定しているようにも思える事。自分はそういう人達を知っているつもりだしそういう人達が生きてられる時間も知っているつもりだしそして自分はこういうアルバムを何枚か知っている。それは自分にとってとても大切なものであってそういう人達にこそ聴いてほしいとも思っていて、自分は『愛のゆくえ』をこれらのアルバムの横に並べるつもりだ。自分にとってこのアルバムは『渦になる』にとてもよく似ていて、違うのはサウンドとテーマ位なものなんだろうなと思う。一時『渦になる』は衝動的で『愛のゆくえ』は理性的、『渦になる』とは真逆の方法でほぼ同質の表現を描ききれるようになった事はとても感慨深く感じられたりもしたのだけど多分それは間違っていて、『愛のゆくえ』はそもそも「愛のゆくえ」というテーマのアルバムを作りたいという衝動から生まれたアルバムなので根源的な部分はやっぱり衝動で、その衝動は『渦になる』を作っていた時の衝動と似ていたのかもしれない。だから多分このアルバムは『渦になる』にとてもよく似ていて、だから僕はこのアルバムを『渦になる』の横に並べる。以上が今現在の自分の感想で全く整理されてない割にはこのまま整理されたり変わっていく事なく続いていくという確信があるのでここで一応の決着としておく。だけどどうしても知っておきたい事、どうしても言葉にしなくてはならない事がひとつだけあるのも確かなのでそれは死ぬまでの宿題としておく。


内容的にはきのこ帝国史上一番地味でパッとしなくてロックでもポップですらなくて、多分最もしっくりくる表現がただ単に“歌のアルバム”である。だけど『渦になる』も言ってしまえば“歌のアルバム”で自分はその“歌”にやられたのだ。そういう点でもやっぱりこの2枚は似てる気がする。『愛のゆくえ』が歌のアルバムになった要因のひとつはzAk氏にあると思っていて、おそらく彼がいなかったらここまで歌を感じるアルバムにはならなかったはずだ。このアルバム一番の功労者はzAk氏なのかもしれない。まぁそんなアルバムなのでみなさんが持ってるきのこ帝国のイメージとはまたかけ離れたものになっている様な気もしなくもないけれどぶっちゃけそんな事は本当にどうでもよくてさらに言えばこれがきのこ帝国の作品であるという事実すらもどうでもいい。これは自分にとって夜のアルバムである。ただそれだけでいい。僕はきのこ帝国が大好きだしこのアルバムも大好きなんだろうけど、全きのこ帝国のファンに届いてほしいともこれで更にファンが増えてほしいともちっとも思わない。それよりも、心の底から聴いてみてほしい人達がいる。そんな事を朝日を浴びながら、次の夜を心待ちにしながら想ったりしている。



このアルバムの曲をこのアルバム以外では決して聴きたくないのでとりあえず今回のワンマンは行かないと思います。